烏鷺光一の「囲碁と歴史」

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爽籟軒(橋本竹下別荘)

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 因島から尾道に帰ってきました。
 江戸時代の豪商橋本家の別荘である。
 橋本吉兵衛(号・竹下)は秀策の後援者で、幼少の時三原の浅野家への口利きなど秀策のために尽力した人物である。秀策が尾道に来るときはここに泊まっていたという。さらにここには頼山陽など広島を代表する文人、学者などが多く出入りしていた。秀策もそういった人物たちと交わっていたのだろう。
 ここは庭園として見学することができ、茶室も借りることができるが、屋敷の方には入ることはできません。

 弘化元年(天保十五年改元)の十二月、郷里に帰着した秀策は諸方にあいさつを済ませ年が明けてから浅野侯に閲見して昇段の報告し加増された。その後、江戸から同行した真井徳次郎と広島を訪れて二局打った。徳次郎はそのまま遊歴を続け、秀策は三原に戻った。

 郷里での秀策は日を定めて三原城に出仕し、藩主の相手や城内の武士の指導をおこなっていたらしい。また、前回の帰国時と同じく勉学にも取り組んでいたのだろう。

 五月に入って最初の師、竹原宝泉寺葆真和尚と対局する機会があった。安芸国の有段者はこのころわずか四人。葆真はそのトップに位置していた。漢学、書画にも通じ、碁の相手としてばかりではなく浅野忠敬の知遇を受けていたという。だからこそ碁才を秀策の指導を依頼する気にもなったのだろう。

 秀策はこの帰郷のおり、頼聿庵(頼山陽の長子で藩学教授)を訪ねた。聿庵は大いに喜び一詩を贈ったという。

 冷静で慎重な秀策だが、時によっては思いきった行動をとる。この旅の帰途、兄とともに鈴鹿森を通過するときのはなしである。旅宿の女中に早朝出立を告げ、起こされて歩きはじめたが様子がおかしい。女中が月の出を朝とまちがえたのだ。森にさしかかると火が見える。山賊の巣として有名な場所だけに兄は戻ろうとしたが、秀策は引き止めて平然と火にあたり、礼を言って立ち去った。賊も呆然として見送ったという。

 この時代の秀策は、将来本因坊家の跡目になるなどと思っていない。前回と同じく一年半を過ごし、お抱え棋士としての義務を果たし、勉学にいそしんでいたようだ。その間、二人の棋客が訪れて、対局があった。一人は兄弟子の岸本左一郎でもう一人は勝田栄助である。

 四月に芸州を出た秀策は大阪で長期間足を止めることとなった。五月に中川順節と四局打ち、七月に井上因碩(幻庵)と打っている。対局の間が空いたのは因碩に来阪の予定があり、それまで引き留められたものか。

 因碩との第一局は七月二十日。二子で対したが打ち掛けとなり、翌日打ち継ぐことになる。しかし当日、因碩は打ち掛けの碁をそのままにして新しく先で打つようにと指示した。二子局の形勢は明らかに黒よしだし、秀策の打ち振りを見た因碩が一刻も早く実力の底を見極めたいと思ったのであろう。

 このときの碁が世にいう「耳赤の一手」の碁である。因碩の門人たちがみな師の勝ちを信じていたとき、観戦していた医師が黒の勝ちと予言した。その理由を、「形勢はわからぬが、黒の一着(耳赤の手)を見て因碩師の耳が赤くなった。その手に動揺し、自信を失った証拠である」と言ったという逸話がある。

 この一手に対して因碩は、「秀策の碁道は秀逸である。十八歳にして既に上手(七段)の域に達する力量をそなえ、そのうえ今後どのように強くなるか計り知ることができない」と言っている。

 秀策はこの碁のあとさらに三局打ち、一打ち掛け二勝となった。

 因碩はこの碁の後、今まで丈和、秀和と争ってきた碁所への野望を断念し、秋に本因坊家に丈和の長子水谷順策(葛野忠左衛門)を乞い、井上家の跡目とした。二年後、因碩は隠居として幻庵と名乗った。

 このとき秀策は四段だが、因碩は「このときの秀策の芸は七段は下らない」と語ったという。

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