烏鷺光一の「囲碁と歴史」

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本因坊丈和の故郷 西浦木負

 本因坊道策、秀策と並び、三棋聖の一人と称される十二世本因坊丈和については、策略をもって名人碁所となった「天保の内訌」という出来事と、その丈和を名人碁所の座から引きずり下ろす意図があったと言われる、江戸時代最大の碁会「松平家碁会」での赤星因徹との対局「吐血の局」が有名ですが、その出自については謎に包まれています。三男で、後の方円社2代目社長の中川亀三郎も、生国については聞いたことがなく、幼い時に武州熊谷あたりで成長したという事しか知らなかったそうです。
 丈和の本姓は戸谷、そして葛野(かどの)を名乗っていた時もあり、公儀に提出した親類書では武州本庄の豪商戸谷半兵衛の一族として届出されています。そのため以前は本庄出身説が定説となっていましたが、近年の研究では、伊豆木負村(きしょうむら)の葛野家の出身というのが有力な候補となっています。
 丈和の故郷の有力候補である伊豆木負村は、現在の沼津市西浦木負で、沼津市中心部から海岸沿いに15kmほど南下したところにあります。そこの長福寺が菩提寺ということなので早速向かってみました。

西浦木負の港
西浦木負の港

 西浦木負は西伊豆で海に近く、漁業の村として発展してきたようです。長福寺に向かいましたが道がかなり狭く、走行に苦労しました。

長福寺
長福寺

 丈和が伊豆の出身であると最初に記されたのは「増訂豆州志稿」という郷土誌です。もとは寛政12年(1800)にまとめられた「豆州志稿」という書物があり、明治に入り地元の国学者が増補改訂作業を行い、明治28年に「増訂豆州志稿」が出版されます。
 その中の人物の部に、きわめて簡潔に、「丈和は本姓を葛野といい、木負村に生まれ、幼名は一作、後に貫一と改める。江戸に出て本因坊家に入門して跡を継ぐ」と記載されています。以降、地元では丈和は伊豆の出身であると認識されていましたが、中央囲碁界では伊豆説は全く知られていませんでした。昭和40年代に入り、地元研究家により伊豆説が紹介されるなど、徐々に認識されるようになり、大沢永弘氏により日本棋院刊行の「棋道」で紹介されたことから広く知られるようになったそうです。大沢氏はその後の調査も含めて「本因坊丈和出自考」という本を出版されています。

本堂
本堂

 「増訂豆州志稿」が、何に基づいて丈和を伊豆出身としたか、明確な資料は残されていません。そのため丈和が伊豆出身であるというのも一つの説にすぎず、正式な出身地は確定していないのが現状です。
 ただ、「本因坊丈和出自考」によると、西浦木負の長福寺で、檀家の6代葛野七右衛門が丈和の父で、丈和の兄は葛野半蔵というと書かれたメモが残されているのが発見されています。これは「増訂豆州志稿」の下書きと考えられ、長福寺の過去帳などを調査した結果を記したものと思われます。
 長福寺の檀家には複数の葛野家がありますが、その中の一つは、歴代当主の多くが七右衛門を名乗っていています。6代葛野七右衛門がどういう人物であったかよくわかっていませんが、網元では無いものの漁業関係者であり、五十集商と呼ばれる魚の仲買人ではなかったかと考えられています。
 長福寺の本堂の裏手にある墓所に、6代葛野七右衛門の墓があります。戒名は「圓行院法信日喜信士」、没年は「文化十二乙亥十月十三日」(1815)となっていました。

丈和の父、葛野七右衛門の墓
丈和の父、葛野七右衛門の墓

 葛野七右衛門の墓の隣りに、丈和の兄で葛野家7代の半蔵の墓もあります。戒名は「真如院観月日明」、「文政十一戊子六月二十六日没」(1828)となっています。どうやら半蔵と丈和は異母兄弟だったようで、丈和にしてみれば故郷を離れやすい環境にあったのかもしれません。
 ところで、丈和が伊豆で生まれたのが正しいとして、公儀に本庄の戸谷半兵衛の一族として報告された経緯としては、多くの文化人を支援していた半兵衛が、自らの店で働いていた丈和の囲碁の才能を認め、身分の低い丈和に対し、囲碁界を背負っていくのにふさわしい、名字帯刀を許された自らの家格を与えたと考えられています。また、逆に囲碁が強いことが分かっていた丈和に、「戸谷姓」を与えるために店で働かせたと考えている人もいます。

丈和の兄、葛野半蔵の墓
丈和の兄、葛野半蔵の墓

 丈和の実家がどかかは分かりませんでしたが、長福寺の周辺には何件かの葛野家がありました。

葛野家の表札
葛野家の表札

長福寺:静岡県沼津市西浦木負274
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